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脳卒中について

オホーツク脳卒中研究会より、脳卒中の予防や治療に関する正しい知識の普及啓発のため、以下の情報提供をいただきましたので、お知らせいたします。


 2007年より活動をしておりますNPO法人オホーツク脳卒中研究会です。オホーツク脳卒中研究会の活動としては、
1,住民への脳卒中に関する啓発
2,脳卒中にかかわる医療・介護従事者のための勉強会、研修会
3,オホーツク地区の脳卒中の疫学調査
を行ってまいりました。従来は、オホーツク地区で1年に1回から2回、脳卒中の予防や治療に関する啓発として市民講座を行ってまいりましたが、コロナ禍のため、広報を通じて皆様に脳卒中に関する情報を発信し、お役に立てれば幸いです。


各論についてはこちら
・オホーツク圏でも受けられる脳卒中医療とは?
・脳卒中が疑われる症状とは?
・みんなができる脳卒中の予防とは?
・脳卒中になってしまったらどうするか?
・脳卒中再発予防と機能維持はどうしたらよいか?
 

脳卒中について(総論)

 脳卒中(のうそっちゅう)は、脳の血管が詰まる脳梗塞、脳内の細い血管が破綻して脳内に出血をおこす脳出血、脳表の太い血管の脳動脈瘤というこぶが破裂して脳表に出血をおこすくも膜下出血に大きく分類されます。2020年にはオホーツク圏全体では、脳卒中患者は1039人いて、わずかに減少傾向です。脳卒中患者の内訳は脳梗塞750名、脳出血227名、くも膜下出血62名でした。脳卒中は発症する直前まで前触れもなく突然起こり、日常生活に支障をきたす後遺症を残すなど、命にかかわる疾患です。

血管が詰まる脳梗塞には、ラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞のように大小の血管の内側にできたコレステロールの壁などの血栓や動脈硬化などによって血流が途絶えるものと、心房細動などの不整脈によってできた血栓が流れて脳の血管を塞いだ結果起こる脳梗塞(脳塞栓症)があり、最近は後者が増え、後者は重症の脳梗塞になりやすく、近年増加傾向にあります。

脳内の細い血管が破綻して脳内に出血をおこす脳出血は、戦後日本国内の脳卒中の多くは脳出血でしたが、血圧が管理されるようになってから脳卒中の中での割合は減ってきています。

くも膜下出血は脳卒中の中で最も死亡率が高い重症な病態です。

 

脳卒中はどんな症状が出るの?

脳卒中の症状の特徴は、まず、急に突然に症状が出ることです。

人間の脳は機能局在といって、脳の場所ごとに役割分担を行っています。

どの場所で障害が起こるかによって運動麻痺、感覚障害、意識障害、言語障害(発語や理解)、視覚障害など様々な症状が出現します。特に発病当初は、頭痛、めまい、吐き気、意識障害、半身まひなどが出現することがります。高次脳機能障害といって、ヒトならではの文化的生活をするための計算・空間認識・言語コミュニケーションなど外見上わかりにくい障害が起こることもあります。

脳卒中は時間との闘いです。早期に治療を開始できれば、軽症で済む場合があります。専門の病院に早期に搬入できれば、脳梗塞の場合には血栓を溶かしたり、血栓を回収したり、先進の医療をオホーツク圏でも受けることができます。脳卒中を疑う症状が見られたら迷わず119番しましょう。

国立循環器病センター病院 ホームページより引用 


 

脳卒中の専門病院では、どのようなことをするのでしょうか?

脳卒中を疑われる状態で病院へ行くと、CT、MRIでの検査が行われ病状を確認します。一部脳梗塞を再度開通させるための治療(t-PA、血管内手術など)は発病から病院へ到着するまでの時間によって不適応となることがありますので、早く病院に行くべきです。ここで重要なことは、これらの検査や治療の中にはリスクを伴うものがあるため、患者や家族の同意書が必要になることがあります。患者の意識が悪い場合には、家族に同意していただくしかないので、必ず、一緒にご家族もいらしてください。

その後、血圧や症状を安定させるため点滴などの治療が行われます。

病態が安定した後リハビリが始まります。通常翌日から1週間程度で開始になります。


 

脳卒中を予防するにはどうしたらよいのでしょうか?

脳卒中になりやすい方は以下のような要因がありますので、発病する間に改善に取り組むことが進められます。

高血圧:血圧が140/90mmHg以上の方は高血圧です。食事は塩分を控えましょう。

糖尿病:食生活の管理や体重のコントロール、運動習慣を心がけましょう。

脂質異常症:コレステロールなどの異常のことです。食生活に気を付けましょう。

心疾患:不整脈や心内膜炎など血栓ができやすい病気は注意が必要です。

喫煙:ニコチンは血圧上昇、動脈硬化を促進しますので禁煙外来へ。

ほかに、肥満、過度の飲酒、慢性的な腎機能障害、睡眠時無呼吸などがあります。

これらの基礎疾患がある人は、ない人に比べて脳卒中になりやすいことが分かっています。中でも最も重要なのは血圧のコントロールです。

脳卒中で入院して行うことは、脳卒中の治療(点滴、内服薬など、場合によっては手術)、機能回復のためのリハビリテーション、原因や誘因を調べて再発予防することです。


 

失われた機能はどうするの?

脳卒中発病後、状態が落ち着き次第リハビリが開始されることが推奨されています。

発病から社会復帰するまでのリハビリの流れが少しでもわかると事前に準備したり心構えができるかと思います。「脳卒中になってから、自宅退院するまでの流れ」について一連の流れを知ることで安心できるかもしれません。また、お仕事へ戻れるのか、通勤はどうなるのかなど、復職のことでお困りの方も多くいらっしゃいます。お仕事についてもあらかじめ知っておくと心構えや準備がしやすいものです。

リハビリを行う上で必要なこと。それは、筋力や努力だけではなくしなやかさや動き方です。脳卒中は、筋肉を冒される病気ではなく、脳の中で作られる運動の組み合わせや器用さの障害です。これは運動だけでなく、感覚やバランスなど様々な要因が関与しています。感覚やバランスを無視して筋力だけを鍛えることがないように注意して取り組むことが必要です。

感覚と運動を積み上げる経験が、動きを改善する鍵」になります。本来の機能回復だけでなく、杖や補装具を使った機能代償の取り組みも時に必要になります。杖・補装具は不安定さを補うなど必要な側面の一方、使いすぎると本来の回復を妨げる側面もあります。しかし杖・補装具など全ての代償を許さないと機能回復が遅れてしまいます。”歩けるようになるまで歩かない”なんてことは現実的ではありません。杖などを活用しつつバランス感覚や歩き方を練習する必要があります。杖や装具ありきでリハビリをしていると、いつの間にかそれがゴールにすり替わっていたりすることがあります。目標を見据えて何のために歩く練習をしているのか、何のために杖を使っているのかを時々考えると良いと思います。

機能獲得と機能代償の双方を考えながらリハビリを進めていくことが重要です。できることなら効率よくリハビリを進めたいところです。効率よくリハビリの効果を身に着けるためには、食事、睡眠、生活のリズムが重要です。食事は、エネルギー補給として当然なのですが、睡眠は体力の回復だけでなく運動のイメージを脳に定着させるために必要です。目標と現状の把握から一歩ずつ前進することが重要です。


 

2020年度オホーツク地区の脳卒中患者の内訳は?

脳卒中の患者は男性55%、女性45%、64歳以下が17%、65-74歳が25%、75歳以上が58%で、高齢者に多い病気であることが分かり、この傾向は10年前と変わりありませんでした。

脳卒中のうち、脳梗塞が72%、脳出血が22%、くも膜下出血が6%でした。脳梗塞72%のうち、ラクナ梗塞は6%、アテローム血栓性脳梗塞は28%、心原性脳塞栓症は19%でそのたの脳梗塞が19%で、10年前と比べて心原性脳塞栓症が増加傾向にあります。


 

2020年度オホーツク地区の脳卒中患者の転帰は?

急性期の治療を10日から30日受けて直接自宅退院できる脳卒中患者は56%、リハビリテーションが必要で、回復期リハビリテーションの病院への転院が9%、福祉系施設や療養型病院への転院は8%、その他の回復期以外の施設への退院が20%、死亡は7%でした。


 

これからの見通しは?

オホーツク圏に限らず、地域では、高齢化が進み、高齢の独居者や高齢夫婦の世帯が増える傾向にあります。また、高齢者では認知機能の低下や廃用が進み、自宅に介護力がなく、軽い脳卒中でも一人暮らしには不安があり、急性期の治療後に直接自宅退院できない人が増えることが予想されます。これからもある程度の介護のサポートを利用しながら住み慣れた環境で快適に自立した生活を送れるように、自ら脳卒中などの予防をしながら健康管理をしていくことが重要です。

 

お問い合わせ

オホーツク脳卒中研究会へのお問い合わせ先

オホーツク脳卒中研究会 理事長 木村 輝雄
teruokimura4@gmail.com

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