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町長室へようこそ No.124

今、森林資源を考える

「森林は全ての根本にある」。10月25日に開催された北海道町村会政策懇談会の講演で、講師である林野庁北海道森林管理局長 新島俊哉氏の冒頭の言葉である。町村会の講演は政治評論家の時局のテーマが案外多いなかで、身近な森林のしかも角度を変えての視点で語られたことは興味深いものでした。
林業関係の会合の挨拶で、「戦後植えた木が伐期(利用期)を迎えている。」はよく使われるフレーズです。本町の場合は昭和29年(1954年)の洞爺丸台風により15年分に相当する風倒木が発生し、他と状況を異にしています。国全体では森林の蓄積が毎年1億立方メートル増加し、その分で国内需要を賄えることになる計算ですが、実際に使えるのは6割で4割は使えないのだそうです。
度々訪れる高知県の山は急峻な地形にスギやヒノキが育っていますが、作業機が入って切り出す道が見あたらない。おそらく苗を入れたカゴを背負って苦労して植えたのだろうに、これだけ急だと木が成長しても利用できず、4割は使えないというのもわかります。それに比べ北海道の山はまだ緩やかで、林道・作業道が入っており、計画的に伐採、植林ができる。人工林は最後まで手入れが欠かせないものなのです。
利用の面からは、原木が建築や用材に使われ、残りは木質バイオマスとして利用していますが、特にバイオマス発電の燃料として大量の木材が使われています。チップボイラーの画像しかし、バイオマス発電はエネルギー効率からみると発電に25%しか利用できず、残りの75%のエネルギーは捨てることになります。これに比べ熱と電気両方を使う仕組みは75%と利用効率が高く、滝上町ではこの導入を計画しています。ホテル渓谷や渓樹園で暖房や給湯に使っているチップボイラーは90%のエネルギー利用率になります。
仮定の話ですが、日本で消費するエネルギーをすべて日本の森林の木材を使ったバイオマス発電で賄った場合、何と8カ月で日本中の森林が裸になるそうです。木は植えてから使えるようになるまで50年かかりますから、毎年一定の量を伐り出すよう計画的な管理が望ましく、伐期が来たからと一度に切ってしまうことは、次の50年まで待たなくてはならず、当然林業・木材加工業・土木などの事業者が育たなくなり、同時に森林の持つ保水・水資源の涵養・多様な生物が棲む環境が保てず、河川の氾濫など大きな災害につながります。上流域は浸水被害がないなどと安心しているわけにはいかないのです。
「河を治めるは、山を治めること」明治時代に氾濫を繰り返した天竜川の山間部2,000ヘクタールに私財を投じて700万本を植林した先人の言葉です。植林活動の様子海が豊かになるようにと漁業者が海岸近くに木を植えた「魚つき林」や上流に植林する取り組みも、海と山の関係を重視しているからなのです。今年の植樹祭のあいさつで言った「森は海の恋人」、木の葉を伝って流れ込む雨水にプランクトンがよく育ち、美味しい魚となる。その恩恵を最も受けているのは我々人間ですから、「森林は全ての根本にある」ということを今一度噛みしめたいものです。

滝上町長 長屋 栄一

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